経営陣から「AIを使ってほしい」と言われても、現場の社員がすぐに使いこなせるとは限らない。株式会社エージェントフォワードの吉山壱正氏は、AIの基本から業務への生かし方まで、現場に寄り添いながら支援している。自らも営業、マーケティング、プロジェクトマネジメント、エンジニア、AI開発責任者を経験してきた吉山氏に、創業の背景と事業への思いを聞いた。
QUESTION 01
創業のきっかけを教えてください。
海外での経験と会社員時代を経て、創業を決めた理由は何だったのでしょうか。
もともと起業したいという思いは、学生時代からありました。大きかったのは、カナダに行って働いた経験です。日本を外から見たことで、日本はとても良い国だと感じる一方、少子高齢化や、グローバルに見た日本の存在感が下がっていることに悔しさも覚えました。いつか起業して変えたいと思ったのが、最初のきっかけです。
カナダにはワーキングホリデーで1年間滞在し、現地のアウトドアブランドで働きました。英語は話せませんでしたが、働きながら学び、最初は接客、その後はマーケティングや在庫管理システムの刷新に関わる現場への説明も担当しました。現場と本部の間に立って動く経験は、その後の仕事にもつながっています。
帰国後は会社員として営業、B2Bマーケティング、プロジェクトマネジメントを経験し、さらにエンジニアとして開発にも携わりました。将来起業するならITだと思い、コードを書く人の気持ちを理解したいと考えて、プログラミングを学びました。その後、エンジニアとして開発を経験し、最後はAIの開発責任者を務めています。会社をつくったのは5月末で、前職を離れて完全に独立したのは8月の頭です。
QUESTION 02
御社はどのような会社ですか?
現在の事業内容と、これから展開する事業について教えてください。
当社は、AIの導入支援コンサルティングを中心に行っている会社です。企業がAIを導入するときに、単にツールを紹介したり、使い方を一度説明したりするのではなく、現場の社員が実際に使いこなせるようになるまで伴走します。システムを開発する会社ではなく、業務にAIをどう生かすかを一緒に考え、定着を支援する会社です。
現在の中心はAIの導入支援ですが、裏側では二つの事業も準備しています。一つはAIスクールで、個人向けに展開する予定です。もう一つはAI人材の派遣事業で、企業向けにAIを使いこなせる人材をアサインする構想です。AIスクールについては、AIを使って副業で稼げるといった訴求ではなく、別の切り口でつくりたいと考えています。
導入支援では開発そのものは行いません。業務をヒアリングし、現状と目指す状態を整理したうえで、AIがどこに合うのかを考えます。企業の規模や部署によって課題は異なるため、現場に合わせて支援することを大切にしています。
QUESTION 03
他社との違い・強みは何ですか?
AI研修や導入支援と比べたとき、当社ならではの違いは何でしょうか。
一番の違いは、教えるだけで終わらないことです。一般的なAI研修のように、一方的に使い方を伝えて終了するのではなく、現場の社員が本当の意味で使いこなせるようになるまで伴走します。「こう操作してください」と伝えるだけでは、業務の中で使えるようにはなりません。
まず、その業務では何が起きているのかを整理します。現状と目指す状態を分けて考え、業務の棚卸しをしたうえで、どこにAIを当てはめられるかを上流から検討します。AIの機能を先に押しつけるのではなく、業務を起点に考えることで、最終的に現場の社員が自走できる状態を目指します。
現在、コンサルティングを担当しているのは私を含めて5名です。メンバーは全員リファラルで集まっています。知識を伝えるだけでなく、相手が理解し、実際の仕事で使えるようになるまで寄り添うことが、当社の支援の核です。
QUESTION 04
どのようなお客様に選ばれていますか?
現在はどのような企業や部署から相談を受けているのでしょうか。
現在は、大手金融機関や大手自動車メーカー、大手保険会社などの支援を担当しています。創業初期から直接エンドクライアントにアクセスできたわけではなく、間に入る企業とパートナーシップを組み、紹介を受けて導入支援やコンサルティングを行っています。
大手企業では、経営陣からAIを使うように方針が示されても、現場の社員がすぐに使えるとは限りません。そのため、部署ごとに支援する形が多く、同じ企業の複数の部署を順番に担当することもあります。会社全体に一度説明して終わりではなく、それぞれの業務に合わせて進める必要があります。
プロジェクトは基本的に3カ月から半年ほどのものが多いです。企業の規模や部署によって課題が違うため、決まったやり方を当てはめるのではなく、現場の理解度を見ながら進めます。AIを使いこなしたいと考えている企業であれば、規模にかかわらず支援できると考えています。
QUESTION 05
一番印象に残っている仕事を教えてください。
創業間もない中で、現場へのAI導入で印象に残っていることは何でしょうか。
創業してまだ2カ月ほどだったため、完成した事例としてお話しできる仕事は多くありません。ただ、現在の支援で強く印象に残っているのは、経営陣からAI活用を求められた大手企業の現場に、どう浸透させるかを模索したことです。トップダウンで方針が決まっていても、現場の社員がすぐに使えるとは限りません。
最初は、どうすれば使いこなせるようになるのかを手探りで進めました。AIをほとんど知らない人に、いきなり操作方法だけ伝えても理解できません。そこで、AIがどのような特性を持っているのかという基本のきから説明することを意識しました。相手の理解度を見ながら、業務との接点を一つずつ整理していきます。
もう一つ大事にしているのは、AIを「楽しい」と思ってもらうことです。嫌いなものを触っても、行動は変わりません。だからこそ、単に効率化の手段として押しつけるのではなく、相手に寄り添いながら、AIを使うことで仕事が変わる感覚を持ってもらうことを心がけています。
QUESTION 06
お客様からよくある質問を教えてください。
料金や対応地域、利用できるAIについて、よくある質問を教えてください。
よくある質問の一つは、料金はいくらかということです。当社の支援は、内容や人数、期間に合わせて見積もりを作成しています。そのため、一律の価格を提示するのではなく、まず相談内容を伺い、必要な支援の範囲に応じて提案します。支援内容・人数・期間に合わせて見積もりを行う形です。
対応地域については、全国オンラインで支援しています。関東近郊であれば訪問できますし、地方への訪問についても、交通費と宿泊費を負担いただければ対応できます。利用条件は特に設けておらず、AIを使いこなしたいと悩んでいる企業であれば相談していただけます。
利用するAIについても、特定の一つに限っているわけではありません。大手企業が提供する複数のAIツールを基本的にカバーしており、企業がすでに使っている環境や、導入したい業務に合わせて考えます。ツールを限定するよりも、業務に合うAIを考えることを重視しています。
QUESTION 07
今後のビジョンを教えてください。
AI事業を通じて、どのような社会を実現したいのでしょうか。
当社は、人の可能性を解放するというミッションを掲げています。AIはどれだけ便利になっても、あくまでツールです。最終的に意思決定をするのは人間であり、AIはそのための補助輪だと考えています。人が非効率な業務に追われるのではなく、生産性を高め、本当に重要な意思決定に向き合えるよう支援したいと思っています。
目指しているのは、人が人にしかできないことに夢中になれる社会です。そのために、AIの導入支援やAI人材のアサインに取り組みます。AIについて困っている企業があれば、スポットでの人材支援も含めて、必要な形で頼ってもらえる存在になりたいと考えています。
AIの分野には、誇大な広告や、実態が伴わない訴求もあると感じています。だからこそ、当社はまっとうにビジネスをしたいと思っています。AIを使えば何でもできると伝えるのではなく、現場の業務と人に向き合い、使いこなせる状態まで支援する。その積み重ねによって、人の可能性を広げていきます。



