フランチャイズ展開を考える企業に対し、制度設計から加盟店募集までを支援する山本善康氏。自身も飲食店を立ち上げ、直営とフランチャイズの双方を経験してきた。全国展開を急ぐのではなく、まず地域で地盤を築くことを重視する。その背景には、現場で試行錯誤を重ねてきた経営者としての実感がある。
QUESTION 01
創業のきっかけを教えてください。
家業を継ぐつもりで入った会社を離れ、独立を決めた経緯を教えてください。
私は大学卒業後、父が経営する建築系の会社に入り、後継者になるつもりで働いていました。しかし入社から3年目に会社が倒産し、突然職を失うことになりました。それでも経営を続けたいという思いは残っており、当時からアルバイトで経験していた飲食なら、手元資金を大きくかけずに開業できるのではないかと考えました。経営はずっとしていきたいという気持ちが、独立を考える出発点でした。
いきなり店を始めるのは難しいと思い、200店舗ほどある焼き鳥チェーンに就職しました。急成長している会社で、最短2カ月で店長になれるという募集内容にも惹かれ、経験を早く積めると考えたからです。そこで店長、エリアマネージャー、新店の立ち上げまで一通り経験しました。その後、滋賀県から東京への転勤の話が出たことで、家族と生活の拠点を持ちたいという思いが強まり、独立を決めました。
最初は滋賀県で焼き鳥店を開業し、現場に立ち続けるよりも、仕組みをつくって横に展開したいと考えていました。開業から4年で3店舗まで増やしましたが、人の入れ替わりなどを理由に出店が停滞し、このままでは当初考えていた規模に届かないと感じました。知り合いの経営者からフランチャイズの仕組みを聞き、頑張ってくれていた店長に店舗を任せる形で、フランチャイズ本部としての取り組みを始めました。
QUESTION 02
御社はどのような会社ですか?
飲食店の運営経験を、現在のフランチャイズ支援にどう生かしているのでしょうか。
当社は、飲食店の直営とフランチャイズ本部の運営を経験してきた知見をもとに、これからフランチャイズ展開を始めたい方を支援しています。現在の収入の中心は、飲食店部門におけるフランチャイズからのロイヤリティと、直営店の売上に対する利益です。一方で今後は、フランチャイズ本部の立ち上げ支援を事業として取り組んでいます。フランチャイズの立ち上げ支援が、これから力を入れていきたい領域です。
支援の対象はサービス業が多く、建設業の方を支援することもあります。契約書の作成、財務状況を踏まえた加盟金やロイヤリティの設計、加盟店の募集方法など、何から始めればよいか分からない段階から制度を組み立てます。まずは知り合いの業者などに実験的に加盟してもらい、その結果をもとに外部へ募集する流れです。制度設計から募集までの一連の流れを支援しています。
募集については、フランチャイズ募集に特化したページをつくる人を紹介する場合もあれば、当社の人脈を通じて候補者とマッチングする場合もあります。広告費を大きくかけるのが難しい本部に対しては、まずSNSや人脈で募集し、加盟金を次の広告のために蓄えるという考え方も伝えています。単に加盟店を増やすのではなく、事業の段階に合った進め方を考える会社です。
QUESTION 03
他社との違い・強みは何ですか?
直営店とフランチャイズ本部の両方を経験していることは、支援にどう表れるのでしょうか。
一番の強みは、現在も飲食店の直営店を運営し、フランチャイズ本部も経験していることです。実体験をもとに、サービスの提案や悩みの解決方法を考えられます。私自身、過去にコンサルタントの支援を受けた際、現場に落とし込む段階で課題が残ると感じたことがありました。だからこそ、机上の説明だけで終わらず、現場に落とし込んだときの課題まで考えて提案します。
もう一つは、全国規模での急速な展開を前提にしないことです。大きな会社では、10店舗や20店舗を目指す事業者が十分に相手にされない場合があると私は感じています。当社は、まず地元地域で5店舗から10店舗規模のローカルチェーンをつくることを提案しています。全国へ広げること自体を否定するのではなく、先に地域で地盤を築くことを重視しています。
地域に集中すれば、広告や配送、人材などの面でも事業を組み立てやすくなります。私は、全国展開は結果としてついてくるもので、最初から全国を目指すことが必ずしも事業者にとって幸せとは限らないと考えています。まずは地域でしっかり地盤を作る。そのうえで隣の都道府県や全国へ進むという順番が、地域の力を生かすフランチャイズにつながると考えています。
QUESTION 04
どのようなお客様に選ばれていますか?
どのような事業者が、フランチャイズ展開の相談に来られているのでしょうか。
当社に相談に来られるのは、すでに事業を営み、これからフランチャイズ展開を考えている方です。特に、直営店を数店舗運営しているものの、次の出店方法に悩んでいる事業者から相談を受けています。直営で増やすことも選択肢ですが、フランチャイズという方法もあると知っていただき、事業の状況に合うかを一緒に考えます。まず何からしたらいいかという段階からの相談にも対応しています。
業種はサービス業が多く、飲食店のほか、パーソナルジムや建設業に関わる事業者の支援もしています。独自の商品や技術があっても、他地域で施工するには限界がある場合があります。そのときに各地域へ協力会社の拠点を置き、商品を届けて施工してもらうなど、事業の特性に合わせた展開方法を検討します。業種を一律に決めるのではなく、地域で展開できる仕組みがあるかを見ています。
私が目指しているのは、地域に力のある事業者を伸ばすことです。全国から加盟希望者を集めることだけを目的にするのではなく、まず地域で認知や顧客との関係を築き、そこから横へ広げていく形を大切にしています。広告費を大きくかけられない事業者には、SNSや人脈を使った募集から始める方法も提案します。事業者ごとの規模と段階に合わせることが、選ばれる理由の一つです。
QUESTION 05
一番印象に残っている仕事を教えてください。
地域で長く続いてきたラーメン店の再展開を、どのように支援したのでしょうか。
一番印象に残っているのは、滋賀県で長く続いてきたラーメン店のフランチャイズ展開を支援した仕事です。その店は1972年創業で、地域の人にとって思い入れのある店でした。以前は複数店舗を展開していましたが、いったん閉店。その後、私の知り合いが店を復活させました。私自身もよく通っていた店だったため、地域の思い入れがある店の復活に関われることに特別な気持ちがありました。
復活させた方は飲食未経験で、当初は昔と味が違うという声が出たり、人件費や原価などのコントロールができていなかったりしました。一方で、滋賀県内で店舗を増やしたいという思いがあり、直営ではなくフランチャイズで広げたいと相談を受けました。そこで、まず数字と味を整えなければ加盟店を募集できないと伝えました。約1年かけて数字を管理し、味のブレをなくす改善を進めました。
改善を重ねた結果、フランチャイズとして2店舗目を出店することができました。フランチャイズは、看板や思いだけで募集を始めればよいものではありません。数字が成り立つこと、商品やサービスの品質が安定していることが必要です。昔から知っている店が再び広がり、そこに自分が関われたことが嬉しかった。加盟した方も、その店を増やしたいという思いに賛同して参加を決めました。
QUESTION 06
お客様からよくある質問を教えてください。
支援内容や費用、対応地域、相談できる事業者の条件について教えてください。
よくある質問の一つは、支援費用がどのように発生するのかという点です。当社では、できるだけキャッシュポイントが後に来るように設計しています。制度設計を始める段階では、すぐに費用が発生する形ではなく、加盟店ができて加盟金が発生し、その後にロイヤリティが発生するという考え方です。支援を始める前に、契約や制度の内容を確認していただきます。
対応地域については、オンラインでの支援もあるため全国に対応可能です。最初の契約などで現地へ行く場合は、交通費を別途いただきます。支援内容は、契約書や制度設計、加盟店募集の方法などです。自社で加盟希望者を見つける場合でも、募集を当社に依頼する場合でも、制度を組み立てたうえで進めます。全国対応可能ですが、事業者の状況を見ながら進めることを大切にしています。
相談を受けても、すべての事業者を支援するわけではありません。何の特徴もなく、そもそも事業として収益化できていない場合、そのまま広げるのは無責任だと考え、お断りすることがあります。フランチャイズ本部が収益を出せていない状態では、加盟店を増やしても長続きしません。一方で、歴史や知名度があり、改善する意思がある場合は、まず事業を整えるところから支援します。広げる前に、広げられる状態をつくることが重要です。
QUESTION 07
今後のビジョンを教えてください。
地域の事業者を支援する取り組みを、これからどのように広げていきたいのでしょうか。
今後は、地域に眠っている事業者にフランチャイズという選択肢を知ってもらい、100社を支援することを目標にしています。地域には、良い店や事業を持ちながら、フランチャイズを選択肢として考えたことがない方がいます。そうした方に、適正な形でフランチャイズをつくる良さを伝えたいと考えています。支援する企業が増えれば、それだけ喜んでいただけるお客様も増えるという思いがあります。
現在は、飲食店、パーソナルジム、建設業、語学教室など、制度設計を含めて7社を支援しています。まだ募集前で設計段階の事業者もありますが、それぞれの事業に合った仕組みを考えています。私自身、当初から地域特化を考えていたわけではありません。さまざまな人と話すなかで、全国展開は結果としてついてくるもので、まず地域に根ざすことが大切だと考えるようになりました。
まずは滋賀県を中心に、地域の経営者とのつながりを生かして支援を広げていきたいと考えています。そのうえで、将来的には各都道府県に営業パートナーのような人を見つけ、地域で事業を広げたい人とつながる仕組みもつくりたいと思っています。全国に一気に広げるのではなく、地域に根差していることが大事という考えを軸に、事業者と加盟店の双方にとって意味のあるフランチャイズを増やしていきます。



