訪問介護の現場に入った若い職員へ、「見た目とは違うね」「若いのにしっかりしているね」と声がかかる。合同会社RKWの大津留瑠希代表は、介護・福祉・医療の採用支援をSNSから始め、現在は介護や運送の現場も自社で手がけている。人材を集める力を自社の事業で実践しながら、従業員や周囲の人がやりたいことを会社規模で応援する組織を目指している。
QUESTION 01
創業のきっかけを教えてください。
介護の現場から起業へ。きっかけを教えてください。
私は、最初から明確な事業計画があって起業したわけではありません。給料を上げたかったことや、電車や人混みが苦手だったことなど、誰もが思うような気持ちが少し強かった、というのが始まりです。高校卒業後に介護施設で働いたところ、給料が低いことに疑問を持ちました。
なぜ給料が低いのかを考えたとき、人材が不足していて、採用にお金を使っているからではないかと思いました。そこで、採用をどうにかできれば状況を変えられるのではないかと考え、介護・福祉の採用支援を始めました。最初に取り組んだのは、SNSを使った採用支援です。
当時、認知症のある方や障害のある方が、現場の様子としてSNS上に顔出しで登場することは、業界では避けられていたといいます。私はそこに取り組み、反響が広がりました。取材や介護雑誌への掲載を経て、少しずつ依頼が寄せられるようになり、介護・福祉・医療の領域に特化した採用支援へと事業が形づくられていきました。
QUESTION 02
御社はどのような会社ですか?
採用支援に加えて現場にも入る、どのような会社なのでしょうか。
合同会社RKWは、介護・福祉・医療の領域に特化した採用支援を行う会社です。SNSを中心に、ウェブや求人媒体も扱い、人材に関する課題を支援しています。採用のための発信だけを外から支援するのではなく、自社でも介護と運送を始め、現場を自社のスタッフで走って回る体制をつくっています。
もともとは、人材を潤わせ、採用にかかる費用を下げ、その分を還元したいという思いで支援していました。一方で、介護や運送は人材が不足しているため、仕事そのものがなくなるとは考えにくい領域だと感じました。そこで、自社でも事業を行うほうが、支援内容への信頼性も高まり、社会的な意味も持たせられると考えました。
現在、介護は大阪で行っており、兵庫でも始める予定があります。運送は大阪と兵庫で行い、今後さらに広げたいと考えています。合同会社RKWのマーケティングは介護・福祉・医療に特化し、別の事業では運送やブルーカラー、特殊な仕事にも対応していますが、人材に困っている会社を採用面から支援することが中心です。
QUESTION 03
他社との違い・強みは何ですか?
採用支援における、他社との違いは何ですか?
強みは、介護や運送など人材不足が深刻な領域で、若く体力のある人材を自社に集められることです。私は、他社から「その業界にそんな人材がいるのか」と驚かれるような人たちを、広告費をかけずに自社へ引き込める点が強みだと考えています。人が必要な業界だからこそ、人をどんどん巻き込んでいける力を重視しています。
人材を集めるために大きな費用をかけていない分、従業員へ還元できる余地があります。その結果、離職率が高いとされる業界であっても、当社では離職が少ないと感じています。運送を始めて7か月の時点で従業員は30人を超え、そのうち離れた人は1人でした。私は、こうした採用と定着の状況そのものを、支援の説得力につなげています。
介護・福祉・医療の支援では、現場出身の経験者が撮影、運用、編集まで行います。採用だけでなく、給与や雇用の細かな部分、面接の方法、会社のPRなども見ます。採用を入口に、会社の見せ方やブランディングまで考えることで、現場を知る人が発信をつくることが、当社の違いになっています。
QUESTION 04
運送業界の透明化に向けた構想を教えてください。
運送業界の透明化に向けた構想を教えてください。
運送業界については、案件の共有や管理を通じて、仕事の流れを透明化できる仕組みがあればよいと考えています。現在は、数人のチームで動く事業者の間に複数の紹介者が入り、案件を別のところへ振る構造が広がっています。管理をしている側が適切に対価を得ること自体ではなく、管理をしない紹介者が間に入り続けることに課題を感じています。
運送には、すぐに対応するスポット案件、定期的に入る案件、一定期間だけの案件などがあります。そうした案件を探せるサービスはすでにありますが、誰でも参加でき、評価制度や透明性が十分ではないため、見つけた案件がさらに別の事業者へ振られることがあります。私は、案件を掲載するだけではなく、誰が仕事を受け、どのように管理するのかが分かる仕組みが必要だと考えています。
具体的な仕組みをまだ固めているわけではありません。ただ、受けた案件を自由に下請けへ振ることを防ぎ、事業者の評価や経歴も確認できるようになれば、発注する側にとっても安心材料になります。既存のサービスを使った経験はありますが、使いやすさや便利さの面で、構造そのものを変える解決にはなっていないと感じています。
QUESTION 05
どのようなお客様に選ばれていますか?
規模や地域の異なる、どのようなお客様に選ばれていますか?
マーケティングでは、介護・福祉・医療の採用に困っている会社から依頼を受けています。全国に店舗を持つフランチャイズ本部のような大きな組織から、1店舗を5、6人で運営する訪問介護事業所まで、規模はさまざまです。介護分野で知られている施設や会社から相談を受けることもあり、大きなところから小さなところまで幅広いのが特徴です。
介護の事業では、地域のお年寄りや障害のある方を利用者として支援しています。マーケティングの顧客とは異なり、介護の現場で必要とされる方々に向けてサービスを提供しています。採用支援では、単にSNSを運用するだけでなく、求人媒体や公式LINE、面接まで含めて、会社ごとの採用課題に合わせて対応しています。
運送では、始めてから7か月の段階でも、直接やり取りする取引先が増えています。人材が増えていることを背景に、通常は信頼を得るまで時間がかかるとされる取引にもつながりました。私は、若い人材を集められることが、規模の大きな会社からも声をかけてもらえる理由の一つだと考えています。
QUESTION 06
一番印象に残っている仕事を教えてください。
介護とマーケティングで、印象に残る仕事は何ですか?
介護で印象に残っているのは、訪問介護の現場です。訪問介護では平均年齢が55歳で、20代の職員がいることは珍しいと聞きます。当社は20代前半の職員を中心に立ち上げたため、現場では見た目などから先入観を持たれることもありました。それでも実際に現場へ入ると、「若いのにしっかりしている」と言っていただけることがあり、うれしく感じました。
介護の仕事では、利用者の方から感謝の言葉をいただく場面があります。外から見た印象と、現場で仕事をする姿との違いを感じてもらえたことは、若い職員たちにとっても意味のある経験でした。年齢だけで判断されるのではなく、実際の対応を通して信頼を得られたことが、印象に残っています。
マーケティングで印象に残るのは、当社が介入することで採用が進み、会社の認知が広がる様子を数字で確認できる仕事です。支援はSNSの投稿だけではありません。給与や雇用の細部、面接方法、会社のPRまで見直し、採用を中心に周辺のブランディングも考えます。施策がかみ合い、採用できた結果が目に見えることに喜びを感じています。
QUESTION 07
お客様からよくある質問を教えてください。
SNSマーケティングについて、よくある質問を教えてください。
SNSマーケティングについては、料金や開始までの期間、対応地域をよく聞かれます。料金は内容に応じて月額3万円から30万円です。SNSだけでなく、公式LINE、必要に応じた採用ページ、求人媒体、面接まで対応するため、社内にプロのチームを置くような支援として考えています。
- 依頼してから、どのくらいで始められますか?
- 内容によります。Instagramの画像投稿であれば、アカウントを作成してから約1週間で開始できます。動画は撮影のスケジュールによりますが、1週目に撮影できれば2週目から投稿できます。
- 対応地域は限られていますか?
- SNSマーケティングは全国対応が可能です。合同会社RKWでは介護・福祉・医療に特化しています。
- 介護・福祉・医療以外でも依頼できますか?
- 運送やブルーカラー、特殊な仕事などにも対応しています。その他の業種も可能ですが、採用支援を中心としており、集客をこちらから積極的に売り込む形ではありません。
採用支援では、同じ求人媒体でも、記事のつくり方や文章の入れ方、アピールの仕方によって結果が変わります。SNS、求人媒体、公式LINEを単独で扱うのではなく、会社がやりたいことや避けたいことを確認しながら組み合わせます。会社ごとにできる範囲を相談して進めることを大切にしています。
QUESTION 08
今後のビジョンを教えてください。
従業員や周囲の人と、今後どんな会社を目指しますか?
会社としてのモットーは、従業員の選択肢を広げることです。他社に対しては採用を手伝い、その会社で働く人の選択肢を広げる。一方で自社では、従業員や周囲の人がやりたいと言ったことを、会社の規模で応援できるようにしたいと考えています。私は、やりたいことを持つ人たちと一緒に成し得たいと思っています。
近い計画として、不動産事業の立ち上げがあります。介護は介護として地域を広げ、運送も地域を広げていきます。それとは別に、代表者や従業員から新しい事業をやりたいという声が出てくれば、そこにも取り組みたいと考えています。現時点で具体的に固まっている新しい事業は不動産ですが、今後も事業の可能性を広げていく方針です。
私は現在26歳で、20代のうちに事業規模を大きくしたいという目標も持っています。介護や運送を一つの地域だけで終わらせず、複数の地域や業種へ展開し、グループ会社をたくさん持ちたいと考えています。自分一人の目標としてではなく、会社で何かを実現したい人たちとともに、組織を広げていくことがビジョンです。
QUESTION 09
事業拡大に伴う組織づくりの課題とは何ですか?
事業が広がるなかで、組織づくりの課題は何でしょうか。
現在の課題は、事業が順調に進んでいるため、目の前の課題やマイナス要素に視点が向きにくいことです。採用や売上、固定費といった課題よりも、今は「もう少しできるのに」という部分へ目を向ける段階だと感じています。事業の拡大に合わせて、人を採用するタイミングと仕事が増えるタイミングのずれを大きくしないことが重要です。
管理体制については、役員のような立場の人がいれば、1人で30人までは見られると考えています。運送では従業員が30人を超えており、管理を担う人を置く動きも進めています。マーケティングでは、1人で20社ほどを見る想定で、そこを超える段階で採用するというように、段階に応じて人を増やす考え方をしています。
最大の難しさは、現在の役員が人を育てるだけでなく、その次の役員がさらに次の人を育てられる状態をつくることです。事業が人で選ばれている分、少しのミスで仕事を失う可能性もあります。自分が直接管理するだけでは拡大に限界があるため、管理する人を管理できる層をつくることが、次の段階の課題になります。


