完成したCRMを、他社の社長に見せて自慢する。そんな場面が、株式会社サナリィの仕事を象徴している。単なる業務効率化ではなく、企業の思いや未来に合わせてITを組み立て、人や顧客の心を動かす体験へつなげる。同社が掲げる「FUN TECH!」の背景には、デジタルを仕事の中で楽しめるものにしたいという考えがある。
QUESTION 01
創業のきっかけを教えてください。
医療からITへ進んだ背景を教えてください。
私には、地域のボランティアの方々に助けてもらい、心を救われた経験があります。その経験から、将来は自分も人を支える側になりたいと考えるようになりました。高校生の頃、地方創生について考えたとき、ビジョンだけでなく、実際に動かすための手法や土台が必要だと感じました。そこで、医療介護、経済、教育の3つを軸にしようと決めました。
当初は医療介護に関わるため、医学部やリハビリの道を考え、茨城県の大学で理学療法士の免許取得を目指しました。目の前の一人ひとりと向き合い、近いところから人を笑顔にしたいという思いがあったからです。しかし、コロナ禍を通じて、医療や介護の現場で頑張る人たちを誰が支えるのか、という問題意識が強くなりました。
少子高齢化によって人が減るなか、限られたスタッフで質を落とさずに現場を支えるには、ITの力が必要だと考えました。そこで新卒でSIerに入り、データ基盤やヘルステック系のプロダクト、経営企画などを経験しました。その後、原点だった三つの軸のうち、ライフアップで医療介護、サナリィで経済に取り組む形で、現在の挑戦につながっています。
QUESTION 02
御社はどのような会社ですか?
サナリィの事業内容と考え方を教えてください。
株式会社サナリィは、大きく分けて二つの事業に取り組んでいます。一つはデータ基盤、DWH、データ分析、データの統合や整備など、企業のデータ活用を支援すること。もう一つは、BizBatonを通じた中小企業へのIT戦略パートナーの提供です。受託開発にも取り組みますが、単にシステムをつくるだけの会社ではありません。
BizBatonでは、経営戦略の中でITをどう使うかという上流の整理から始めます。必要であれば開発を行い、事業企画を一緒に考えることもあります。経営とITの間にある課題を整理し、企業にとって何を優先すべきかを考えながら、ITにまつわるCXOのような役割を担うイメージです。
その根底にあるビジョンが「FUN TECH!」です。ITやデータ活用を、怖いものとしてではなく、面白いものとして取り組んでもらいたいと考えています。業務を効率化するだけでなく、ITを使うことで仕事や顧客との接点に楽しさをつくる。そうした考えを、サービスの設計や提案に反映しています。
QUESTION 03
他社との違い・強みは何ですか?
データ活用で、どんな違いを生み出しますか?
サナリィが大切にしているのは、ITによる効率化だけで終わらせないことです。業務効率化は必要ですが、それだけでは企業の売上や利益、顧客との関係につながらない場合もあります。そこで私たちは、企業の内面や強みを見つめたうえで、ITをどう使えば人の行動や気持ちを動かせるのかを考えます。
その考えを、私たちは「心を動かす力」と表現しています。例えば、商品を早く届ける仕組みだけでなく、購入したくなる体験や、誰かに伝えたくなるストーリーをデジタルでつくる。体験価値が生まれれば、商品やサービスへの関心、継続的な売上にもつながる可能性があります。
そのため、まず企業の内面を見る「LOOK INSIDE」を重視しています。何のために事業をしているのか、どんな未来を描いているのかを聞き、そこから課題の構造を分解します。企業に合わない仕組みを、利益が上がりそうだからという理由だけで導入すると、将来は負債になるかもしれません。企業の思いとITを結びつけることが、私たちの違いです。
QUESTION 04
どのようなお客様に選ばれていますか?
どんな経営者や企業と相性がよいのでしょうか?
企業規模や業種は、当初想定していたよりも幅広くなっています。そのなかでも、思いを持っている経営者の会社や、ビジョンを大切にしている経営者とは相性がよいと感じます。これから成長したい会社、ゼロイチの段階にある会社、急成長の途中にある会社から相談を受けることもあります。
相談内容は一つに限りません。事業に付加価値をつけたいという相談もあれば、AIを活用していても、セキュリティやITの土台が十分か判断できないという相談もあります。エンジニア出身ではないCTOを支援し、土台固めを手伝うこともあります。必要なIT人材がすぐに見つからない会社に対して、つなぎの役割を担うこともあります。
新しいプロダクトをつくる会社には、ITのベストプラクティスだけでなく、顧客のユーザーエクスペリエンスやユーザーストーリーマップの整理から伴走します。CEOとCTOのコミュニケーションにずれがある場合は、会議に同席して整理することもあります。課題は多種多様ですが、経営者の考えや目指す方向を理解し、必要な支援を組み立てる点が共通しています。
QUESTION 05
一番印象に残っている仕事を教えてください。
お客様の心を動かした仕事を教えてください。
印象に残っているのは、建設業のお客様にCRMをつくった仕事です。システムは社内で使うものなので、新しく導入しても、車を買ったときのように他の社長へ自慢するものではないと思っていました。ところが、その社長は完成したCRMを他の社長に見せて、「すごく良くない?」と自慢してくれました。その反応がとても嬉しかったです。
そのCRMでは、最初から機能や課題だけを聞いたわけではありません。何のために創業したのか、どこを目指しているのか、どうなりたいのかを聞きました。経営者が思い描く未来を掘り下げ、そこから現在の課題が生まれている構造を一緒に整理しました。私たちが重視する「LOOK INSIDE」を、実際の提案につなげた仕事です。
一般的には、基幹システムは読み込みが速く、業務を効率化できればよいと考えられがちです。しかし、毎日触るシステムだからこそ、組織のストーリーや社員同士のコミュニケーションを伝える場にもできます。社内の発信をロード画面に表示するような発想も含め、企業の未来を聞いたからこそできる提案が、社長の心を動かしたのだと思います。
QUESTION 06
今後のビジョンを教えてください。
デジタルを使って、どんな未来をつくりたいですか?
サナリィでは、「FUN TECH!」という言葉の通り、デジタルを使って仕事の中に楽しめる要素をつくっていきたいと考えています。今後は、東京都内と地方をつなぐ、デジタルを使ったレストランのような場も構想しています。地方の名産品や郷土料理を東京で提供し、食とデジタルを組み合わせて、地方を感じてもらう場所です。
例えば、地方の料理を提供するだけでなく、その料理が生まれた土地や素材の背景を映像で伝える。デジタルアートやプロジェクションマッピングを使えば、地域が変わるたびに大きな内装工事をしなくても、空間の印象を変えられます。料理をきっかけに、その土地へ行ってみたいと思う人が生まれれば、都市圏から地方への経済の流れにもつながるかもしれません。
短期的には、BizBatonをより多くの企業に届け、地方のお客様への支援を広げていくことを目指しています。その先には、地方都市にサテライト拠点を展開し、地元の学生や若い人が働ける場所をつくる構想があります。東京の社員との技術交流やローテーション配置を通じて、地場で人を育て、雇用を地域で解決できる力をつけていきたいと考えています。



