人材紹介の現場には、求人情報、求職者情報、面接状況など、さまざまなデータが存在する。一方で、それらが複数のシステムや手作業に分かれ、業務の負荷や管理の難しさにつながっている。株式会社エボルグの宮崎将成代表取締役は、まず人材紹介会社向けのCRMサービスから、HR業界の構造的な課題に向き合おうとしている。
QUESTION 01
創業のきっかけを教えてください。
会社員時代の経験から、独立を決めた理由を教えてください。
創業の一番の理由は、自分の決定幅を増やしたいと思ったことです。私はそれまで正社員として複数の会社に在籍していました。最後は比較的小さな会社でも働いていましたが、自分が納得できないことや、感覚が違うと感じることがあっても、会社員である以上は従わざるを得ない場面がありました。そこで、自分がある程度の決定権を持ち、納得できる形で仕事をしたいと考えました。
当初から、明確なビジョンや「これをやりたい」という事業が決まっていたわけではありません。まずは、自分が納得する形で仕事をすることが独立の出発点でした。一方で、これまで人材紹介会社や社内の人事に関わってきた経験があり、HR業界には身を置き続けたいという思いもありました。人材紹介という選択肢も考えましたが、業界の構造を変える何かをしたいと考え、まずは採用コンサルティングから始めました。
採用コンサルティングは、独立してから本格的に取り組みました。会社員時代に自社採用で行っていたことを、外部の会社に対して展開する形で始めたものです。さまざまな会社の採用課題に触れることで、HR業界にどのような根本的な課題があるのかを、より深く捉えられるのではないかと考えていました。
QUESTION 02
御社はどのような会社ですか?
現在はどのような事業に取り組んでいる会社なのでしょうか。
現在は、人材紹介会社向けのCRMサービスを開発しています。採用コンサルティングから始めたのは、HR業界の課題に触れながら、構造的な問題を解決するための方法を考えたかったからです。今取り組んでいるサービスは、私が構想している全体の中では、まだ最初の段階に位置づけています。
人材紹介会社向けのサービスから始めたのは、自分自身の経験を生かせることに加え、お客様のニーズや根本的な課題を、ある程度深く理解した状態で取り組めると考えたためです。最初から大きな領域に進出すると、競争の激しい市場に巻き込まれる可能性もあります。まずは自分の実体験から始められる領域でサービスを形にし、次の段階へつなげようとしています。
サービスでは、人材紹介における登録からマッチングまでの業務を対象にしています。求人情報は採用管理システムにあり、求職者の集客方法も会社によって異なります。そうした業務のうち、AIで補完できる部分はAIで行い、人が担った方がよい業務と分けることで、人の負荷を減らすことを目指しています。
QUESTION 03
他社との違い・強みは何ですか?
人材紹介会社向けのサービスとして、どのような点を強みにしていますか。
強みは大きく二つあります。一つはAIネイティブであること、もう一つは人材紹介のオペレーションに最適化し、できるだけワンストップで使えるようにしていることです。既存のシステムに後からAIを載せるのではなく、最初からAIを前提にシステムを設計し、この業務はAIで解決できる、この業務は人が担った方がよいという切り分けを行っています。
人材紹介会社では、求人情報の管理、求職者との面談、集客、求人の紹介などが、複数の方法やシステムに分かれていることがあります。スカウト、自社のページ、送客サービスなど、求職者を集める方法も会社ごとに異なります。そこで、登録からマッチングまで、AIで補完できる部分を一つの流れの中で扱い、営業や担当者の入力作業などの負荷を軽くしようとしています。
もう一つは、求職者が求人を選び、企業に推薦され、日程調整を行うまでの流れを、サービス画面の中で完結できるようにしている点です。従来は連絡手段や求人票の共有が分かれることもありましたが、サービス内でつなげることで、データの欠損を抑え、データが関係づけられた状態で蓄積されます。これが、業務を分断させない設計につながっています。
QUESTION 04
どのようなお客様に選ばれていますか?
現在は、どのような規模や地域の人材紹介会社に利用されていますか。
現在は、自社システムを持っていない会社であれば、規模を問わず利用いただいています。利用企業には、一人で運営しているような会社から、百人規模の会社まであります。自社でシステムを開発して運用している大規模な会社は対象外になりますが、それ以外であれば、会社の大きさによって対象を限定しているわけではありません。
地域も限定していません。四国や九州の会社もあれば、東京の会社もあり、利用企業のエリアはさまざまです。人材紹介会社の業務には共通する部分がある一方で、集客方法や社内の運用は会社ごとに異なります。そのため、地域や規模よりも、自社システムを持たずに業務を管理しているかどうかが、現在の利用条件に近いといえます。
サービスを導入することで、これまでスプレッドシートなどで行っていた管理を、システム上で扱えるようになります。人材紹介会社向けに業務を設計しているため、単に情報を保存するだけではなく、求職者と求人の関係や、選考の進み具合を管理することを想定しています。
QUESTION 05
一番印象に残っている仕事を教えてください。
導入によって、現場の管理方法が変わった事例を教えてください。
印象に残っているのは、スプレッドシートで管理していた人材紹介会社に、システムを導入していただいた仕事です。人材紹介では、一人の求職者に対して複数の求人が同時に進むことがあります。一般的な法人営業のように、一人の担当者に一つの商談が紐づく形ではなく、一人の求職者に複数の求人が進む構造になっています。
そのため、面接の件数だけを見ても、実際に何人の求職者が面接に進んでいるのかは分かりません。同じ求職者が複数の企業の面接に進んでいても、最終的に内定を承諾できるのは一つです。お客様が知りたかったのは面接の総数ではなく、面接に進んでいる人の数でした。ところが、この人数を重複なく数えることが難しいという声がありました。
そこで、どのような表示であれば数字を管理しやすいかをヒアリングし、対象となる人数を一覧で見られるようにしました。業界特有の管理方法を理解し、現場で必要な数字を見える化していった事例です。単にシステムを導入するだけでなく、実際の運用を聞きながら表示や管理方法を調整したことが、数字の見える化につながった仕事として印象に残っています。
QUESTION 06
お客様からよくある質問を教えてください。
料金や利用できる機能について、どのような質問が寄せられますか。
料金については、初期費用と利用人数に応じた月額費用について質問を受けます。初期費用は、設定やデータ移行のために10万円です。月額は1ユーザーあたり1万円で、10人で利用する場合は月額10万円になります。オプションを増やすと分かりにくくなるため、基本的には1ユーザーあたり1万円の中で機能をまとめて使える形にしています。
- CRMだけでなく、ほかの機能も使えますか?
- CRM機能だけでなく、MAの機能やAIの機能も利用できます。求職者に定期的にメールを送ったり、求人側に一斉にメールを送ったりすることもできます。
- 初期費用以外に、追加のオプション料金はかかりますか?
- 初期費用は設定やデータ移行のために10万円です。月額のランニング費用については、それ以上の追加料金を設けず、1ユーザーあたり1万円の中でCRM、MA、AIの機能を使える形にしています。
QUESTION 07
今後のビジョンを教えてください。
HR業界の課題に対して、今後どのような世界を実現したいのでしょうか。
ビジョンは、HRテクノロジーの遅れをなくすことです。宮崎代表は、マーケティング業界と比べるとHR業界のテクノロジーは遅れていると言われていると話します。その背景には、HRのさまざまなプロセスが縦割りになり、隣り合う領域であってもデータが引き継がれないという課題があります。
今後は、採用企業が採用に関する業務を、一つのデータスキームの中でスムーズに完結できる世界を目指しています。採用には多くのプロセスがあり、それぞれのシステムが分断されていると、データの受け渡しや管理に手間がかかります。まずは人材紹介会社向けのサービスから始め、そこで得た経験を次の段階へつなげていく考えです。
データの断絶をなくすことができれば、採用にかかる費用や手間を減らせる可能性があります。その結果、企業が採用を少しでも楽に進められ、従業員への還元や研究開発に資金を使えるようになることを、宮崎代表は望んでいます。サービス単体の効率化にとどまらず、採用に関わるデータをつなぐことが、将来に向けた取り組みの軸になっています。



