古いシステムを使い続け、更新には高額な費用がかかる。そんな訪問歯科クリニックの課題に対し、RANGE SYSTEMSは既存機能を引き継ぎながら、使い勝手と運用コストを見直した。地方の開発チームによるニアショア開発を軸に、受託開発、自社サービス支援、AI・DX導入まで手がける萬代蘭丸代表に、創業の背景とこれからの構想を聞いた。
QUESTION 01
創業のきっかけを教えてください。
会社員から独立したきっかけは何だったのでしょうか。
私はもともと、システム開発会社で6年ほどサラリーマンをしていました。入社時点ではプログラミングの知識もなく、船をつくる仕事を希望して説明会に行ったところ、グループのシステム開発会社に入ることになった、という始まりです。岡山で就職できることや、条件がそろっていたことから入社を決めました。
転機は、仕事で見積もりやパートナーの原価管理に関わったことです。外部のフリーランスや企業に、開発費として毎月かなりの金額を支払っていることを知り、自分もフリーランスとしてできるのではないかと考えるようになりました。自分でやればもっと稼げるのではないかと思い、独立に向けた準備を始めました。
その後、代理店にフリーランスとして仕事ができるかを相談し、「全然いけますよ」と言われたことも後押しになりました。会社員として働き続ける道もありましたが、独立という選択肢を知り、挑戦してみようと決断しました。最初から明確な起業家像があったわけではなく、会社で得た実感と準備の積み重ねが、フリーランスエンジニアになるきっかけでした。
QUESTION 02
御社は受託開発のみを行う会社ですか?
受託開発以外には、どんな事業を展開しているのでしょうか。
受託開発だけではありません。事業は大きく分けて三つあります。一つ目は、お客様の業務に合わせたオーダーメイドのシステム開発です。既製のSaaSでは対応しにくい業務をヒアリングし、必要な機能を組み合わせて構築します。
二つ目は、お客様が自社サービスをつくる際に、構築や検証から一緒に入っていく支援です。データを活用したサービスについて、仮説を立て、分類や分析の仕組みを検証しながら、将来的なサービス展開を見据えて関わります。単に依頼されたものをつくるだけでなく、サービスの形を一緒に考えていく仕事です。
三つ目は、地方の中小企業に向けたAI導入、DX、IT活用の支援です。MEOや採用ダッシュボード、AIエージェントやOCRを使った業務効率化など、規模を問わず相談を受けています。地方のITの窓口を任せてもらうという考えで、身近な改善から大きなシステムまで対応しています。
QUESTION 03
他社との違い・強みは何ですか?
ニアショア開発ならではの強みを教えてください。
強みは、地方のエンジニアと取り組むニアショア開発です。海外の開発チームと仕事をした経験もありますが、要件を伝えてつくってもらうだけになり、会話の中から面白い提案を広げる難しさを感じました。そこで、岡山や熊本など地方にいるエンジニアと協力し、コミュニケーションを取りながら開発する形を重視しています。
地方の開発チームを活用することで、東京や大阪の単価と比べて、お客様から見てコスパが良い開発を目指せます。一方で、価格だけを下げればよいとは考えていません。新しい技術を使える若いエンジニアを集め、通常のシステム開発だけでなく、AIを使うような案件にも対応できる体制をつくっています。
現在は、地方のエンジニアを少数精鋭で集めています。小さな会社だからこそ、案件ごとに必要な人が関わり、状況に応じて柔軟に動ける点も特徴です。地方ならではのコスト感と、技術や対話を重視した開発を両立させることが、当社の強みだと考えています。
QUESTION 04
どのようなお客様に選ばれていますか?
どんな業種や規模のお客様から相談を受けていますか。
業種は一つに限られていません。大きな受託開発では、売上が1億円以上で、従業員が増えてきた段階の中小企業から相談を受けることが多いです。会社が成長して業務が複雑になり、既存のやり方では管理しにくくなったときに、システム化を検討されるケースがあります。
一方で、地方の事業者からの相談は、もっと小さな規模でも受けています。ピラティススタジオや保育園などから、ホームページ制作やMEO対策を依頼されることもあります。業種はバラバラですが、それぞれの事業者が抱えている課題を聞き、必要なところから始める点は共通しています。
開発の進め方も、最初から大きく始めるとは限りません。まずは小さな範囲で検証し、お客様と「これでいける」と合意してから本開発に進めます。時間をかけてヒアリングすることで、思っていた通りの、実際に使えるシステムに近づけていくことを大切にしています。
QUESTION 05
一番印象に残った出来事は何ですか?
これまでで特に印象に残っている案件を教えてください。
特に印象に残っているのは、訪問歯科クリニックのシステムをつくり直した案件です。もともとは古いシステムを使っており、クラウドと呼ばれていても実態はレンタルサーバーでした。動作環境が古く、更新もしにくい状態で、毎月のサーバー費用もかかっていました。
訪問歯科に合う既製のSaaSが見つかりにくく、予約、請求、患者情報など複数の業務を一つにまとめる必要がありました。以前の開発会社がなくなっていたこともあり、他社からは約2000万円の見積もりが出ていたそうです。そこで当社が入り、既存の機能を確認しながら、使いにくかった部分も含めて新しい仕組みに置き換えました。
結果として、当社はトータルで400万円ぐらいで対応しました。開発言語を新しくし、クラウドも従量課金制のものに変え、月々の費用を抑えています。機能を引き継ぐだけでなく、現場が不便に感じていた点も更新したことで、急にシステムが止まる不安がなくなり、お客様にも安心してもらえました。
QUESTION 06
お客様からよくある質問を教えてください。
料金や開発期間について、よく聞かれることは何でしょうか。
料金については、オーダーメイドのため一律には決められません。まず内容を聞いて見積もりを出しますが、相談の段階では、一般的なシステム会社に依頼する場合の金額と比べて、半額では絶対できると伝えています。実際の費用は、必要な機能や規模、開発の進め方によって変わります。
- 料金はどれくらいですか?
- 内容を確認してから見積もりを出します。一概には言えませんが、一般的なシステム会社に依頼した金額の半額では対応できるとお伝えしています。
- 開発にはどれくらいかかりますか?
- お客様の合意が得られれば、すぐに開発へ取りかかります。数百万円規模なら最短3か月ほど、1000万円規模になると半年ほどが目安です。
- 最初から大きな開発を始める必要がありますか?
- 一括で進めるのではなく、事前にフェーズを分けます。まずは小さく始めて検証し、お客様と合意を取ったうえで本開発へ進めます。
対応地域に基本的な制限はなく、全国に対応しています。開発では、最初にしっかりヒアリングし、フェーズを踏んで進めます。思った通りのシステムになっていくことを重視しているため、短期間で一気に完成させるよりも、確認と合意を重ねながら使える形に近づけていきます。
QUESTION 07
今後のビジョンを教えてください。
地方のIT活用を、これからどう広げていきたいのでしょうか。
目指しているのは、47都道府県に1人ずつエンジニアがいる状態です。フルリモートであれば、どの県にいても仕事ができます。各地域で課題が起きたとき、その地域のエンジニアが対応するITの地産地消をつくりたいと考えています。
イメージしているのは、会社が税理士に相談するように、ITについて相談できる人がいる状態です。社内に専門人材を抱えることが難しい会社でも、ITの人が身近な立場で関われば、業務の効率化や自社サービスの改善に取り組みやすくなります。地方の中小企業がITで効率化し、その先の地域も活性化していくことを目指しています。
そのための課題は、地方のエンジニアとの協業を増やすことと、各地域で仕事をつくる営業の仕組みです。現在は紹介を中心にしていますが、AI導入のような分かりやすいサービスパッケージをつくり、各都道府県でITコンサルとして入っていける窓口を構築しています。仕事が生まれれば、地方でリモート勤務を希望する人を採用し、仲間を増やしていけます。



